飴ノート

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負けた将棋との向き合い方

将棋の棋力向上にあたり、最も短時間で簡単に伸ばせ、かつ最も難しいのが負けた棋譜との向き合い方だ。どこが悪く、どうすればよかったのかを反省する時間は、実対局の何十局もの価値がある。だがそれが解っていても、なかなか立ち止まれない。気が付いたらインターネットで次の対局に向かってしまう。この習性を何とかしなければと、将棋部の現役時代は常々思っていたものだ。

負けた将棋と向き合うメリットを理解しているにも関わらず、そのメリットを不意にしてまで「勝ちたい」と思っていた。将棋ほど実力にそのまま依存するゲームは少ない。運の要素が少なく、自分の積み上げてきた実力がそのまま勝敗に直結する。つまり、負けるということは、自分の実力が相手より劣っていたことに直結すると考えていた。それを認めたくなかったのだ。

もしこれから棋力を伸ばそうとしている人が、当時の僕と同様に目先の「勝利」を目的に将棋を指しているのであれば注意が必要だ。折角時間をかけて丁寧に将棋を指したのに、棋力を伸ばす機会を不意にしようとしている。

指した後はちょっとだけ間を置こう。負けた将棋を指した時、最も棋力を向上させるのに役立つ武器を手に入れた瞬間だと喜ぼう。武器とはもちろん、自分が指して負けた将棋そのものだ。

そうはいっても、負けた内容によっては見たくないような棋譜、忘れたいような棋譜だって存在するだろう。どうすれば負けた将棋と向き合えるのか。僕の経験からその方法を整理してみた。

1.嫌な時はすぐ振り返りせず記録だけ取る

しばらく見たくないようなひどい将棋、逆転負けをしたような将棋でお勧めなのは、記録だけ取ってすぐに感想戦を行わないことだ。このような将棋を指した後は、多くの人は感情的になっている。そんな状態で振り返りを行ったところで、感想戦はやっていても頭の中は「早く感想戦を終わらせて次の対局に行きたい」と考えている。たいした成果は得られない。

こういう時は棋譜だけどこかに取っておこう。インターネットで指したのであれば棋譜だけPCのどこかにコピーして保管しておけばいい。将棋サイトによっては、一定期間経過すると履歴から無くなるので注意したい。リアルで対局した場合は忘れないうちにデータ化して保管したい。ちなみに僕は大事な局面だけでもすぐ思い出せるようにしけば良いと考えている。リアルの対局をわざわざ全部棋譜入力するのは大変だしね。

2.気持ちに余裕がある時に徹底的にやる

保管した棋譜の振り返りは、気持ちに余裕がある時に意欲的にに取り組みたい。もし感想戦のパートナーがいる時は、自分が感じた不明点、疑問点をどんどん提示していこう。その際、何故自分がその着手を選んだのか説明することが大切だ。なぜその着手を選んだのか意図がわかれば、パートナーも指摘がしやすい。

人に説明をする習慣をつけると、対局中に「なんとなく」で指すことが少なくなる。なんとなくという感覚は文字通り曖昧な言葉であり、安定した棋力向上は見込めない。人に説明をすることは感想戦で棋力が伸びる大切な要素なので、早くからこの習慣を身に着けたいところだ。

3.強い人の「なんとなく」を聞いたら掘り下げよう

強い人と感想戦が出来る以上に棋力が伸びる機会は無いと思っている。なので、もしその機会があればどんどん自分の疑問をぶつけていこう。その際、強い人の着手の意図を尋ねると、よく「なんとなく」という回答が返ってくることが多い。この「なんとなく」は2.で上げた「なんとなく」とは意味が違う。お幼い頃から何度も対局を重ねた結果、いちいち着手の理由を考えずに体で覚えて指しているから、「なんとなく」という言葉になるのだ。

疑問点をぶつけて「なんとなく」という答えが返ってきたら掘り下げよう。強者が体で覚えさせている「常識」の感覚を会得できるチャンスだ。

4.感想戦のパートナーを見つけよう

感想戦を行うパートナーがいれば、一人でやるのに比べて負け将棋と向き合いやすくなるだろう。もしそのパートナーが都合がつけやすい相手であるならば、事前に1度自分で整理した状態で行うのが効果的だ。スムーズに感想戦が進み、大きな成果が得られるだろう。

僕みたいに将棋部に入るまでほとんど将棋の勉強していなかった身の場合、年が進むにつれてどんどん自分より強い後輩が入ってくる。だが、後輩にも解らないことはどんどん聞いていこう。余談だが、質問をするということは「相手の能力や才能を認めている」ことだ。つまり、質問をすることは褒めているのと同じことなのである。

もしこんなことを聞いてくるのかと馬鹿にされそうな不安があるのであれば、それは杞憂だ。表面上馬鹿にしてそうな顔をしていても、内心は「自分を頼ってくれて嬉しい」という喜びの感情になっている。将棋をやっている人は、自分の実力を認められると嬉しい人ばかりだ。どんどん頼って多くの技術を盗んでいこう。

この記事のまとめ

<まとめ>

  • 気持ちに余裕がない時は棋譜だけ保存し、一旦その将棋のことは忘れる。
  • 自分の着手の意図を説明する癖をつける。
  • 強い人の「なんとなく」を掘り下げて、強い人の「常識」を身に着ける。
  • 良きパートナーと感想戦をする。